[057]
国民協同党 石崎千松
それから警備力の問題であります。警備力を増強するといったお話があったように思いますが、私は福岡県でありますが、福岡県からずっと山口県にかけて朝鮮人の密入国する者がずいぶんたくさんあります。福岡県自体も警備員をそこここに置いておるはずでありますが、どうも朝鮮人の密入国が、こっちから向うに送り還えすものよりもむしろ多い。だから朝鮮人は殖えはしてもちっとも減らないといったような形でありますが、これに対して内務省はどういうふうに考えていらっしゃいますか。
[058]
政府委員(内務事務官) 田中楢一
警備力の増強、すなわち警察官の増員の問題でありますが、今福岡県のお話がありましたが、福岡県を初めといたしまして、北九州、それから最近は南九州の方面に及び、あるいは四国、山口、島根という方面まで密入国があるのであります。
その他の問題で、あるいは進駐軍関係の警備やいろいろの問題で、警察の手を奪われまして、警察の手不足に各県とも弱っておるのであります。福岡県あるいは佐賀県、長崎県というような県は最も不足を嘆いておる県であります。内務省としましては、できるだけ早く増員して、そうして十分な警備を実施したいと願っておるのでありますが、進駐直後に警察官の増員は当分の間まかりならぬという指令に接しておりまして、その後実情を訴えまして、一時も早く増強をすることができるようにお願いしておるのでありまして、まだ見透しはつきませんが、漸次実情は十分了解してもらっておるのであります。
私ども一日も早くその実現を急いでおる次第でありますが、そういう事情にありますので、従って福岡県等も警察官が不足するので、やむを得ず警察の補助員のような便宜的な措置をとっておるのであります。これはもちろん警察として正常な処置でありません。できれば全部正常の警察官をもって警備したいのでありますが、実情はそういう事情であります。そうしてこの密入国の問題につきましては、なお別個にいろいろ方策を考えておるのでありますが、まだここで具体的に申し上げる域に至っておりませんけれども、早晩実現するのではないかと思っております。
[059]
国民協同党 石崎千松
そこのところが私の聞いておるところでは、福岡県なんでありますが、700とかいったようにも記憶しますが、何100かの人を臨時に入れて朝鮮人の密入国に対する取締りをやっておる。ところが、実際は朝鮮人はちっともつかまえない。つかまえきれない。つかまえられぬ。なんにしても、つかまえたという成績がたくさんない。入ってくることだけは確かである。
そこで、この監視人と言いますか、これらの人を増す、鞭撻する必要を私たちは感ずると同時に、今国内における朝鮮人は日本の法律で取締ることができることになっておりますから、1940年、この戦争の始まります少し前にアメリカがとった日本人に対するやり方というものは私は参考になろうかと思う。それは、フィンガー・プリントをとった。そうして写真とフィンガー・プリントの2つをつけてそれを日常携帯させた。それがなかった人は密入国である、大概日本から入ってきたスパイであるということによって直ちにつかまえる制度を設けたが、日本もこういう制度を設けたら朝鮮人の密入国を防ぎ、あるいは密入国者を送還するのに便利であろうというふうに考えるのですが、これらの考えは御参考になりましょうか。
[060]
政府委員(内務事務官) 田中楢一
朝鮮人の密入国の問題でありますが、あまりつかまえていないというお話がありましたが、これは日夜非常な努力をいたしまして、相当な成績はあげておるのです。しかし数が多いものですから、こちらからつかまえて送り還えすその数と匹敵するくらいが毎日入って来るという状況になって、実に弱っておるのであります。
根本的方策としまして、ただいま指紋のお話がありましたが、実は在留朝鮮人についての登録制度を実施したらどうかという問題が以前からあるのであります。これにつきましては、国際関係もありまして、なかなか警察における登録というのは簡単に行かぬのであります。現に大阪だけが地元の進駐軍と連絡をとりまして、大阪府下だけがこれを実施して相当の成績をあげておるのであります。
ほかの方では登録というのは原則としては、これは市町村役場でやるべきものであるという建前からいきまして、昨年も実は登録したのであります。昨年の3月にも帰国希望者、在留希望者というものについて登録しまして、帰国希望者の登録した者については裁判上の特権を与えるというので、なるべく帰国の便宜をはかり、帰国の旅費等も政府で負担するという諸種の便宜を与えて、帰国せしめようとしました。ところがこれは今申しましたような建前から、市町村役場に警察も一部協力したのでありますが、警察が主体でなくて十分な効果が上らなかった。途中から情勢がかわりまして、帰国希望者が9割以上になっておったのでありますが、帰国した者は全体の1割前後に過ぎないというようなことで、その成績から見ましたならば失敗に終っておるのであります。
それでさらに根本的にやらなければならぬというので、一番その影響を受けます、その関係者の多い、密入国者が集まって来る溜りになります大阪におきまして、これを何とかして根本的に正しく居住しておる者と密入国ではいって来る者とを区別して、正しく居住しておる者は適正な保護を加えると同時に、密入国者に対しては適当な措置をとる、これをまた朝鮮に送り返す、その見分けのためにどうしても登録制度をとらなければならぬというので、ようやく最近写真入りの登録証をつくりまして、みな携帯さすようにした。これは成績はいいようでありますが、はたしてこれを全国的に実施するかどうかは今研究問題であります。もしそういうことができれば、こちらとして非常にやりやすいと思っております。