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説明員(運輸事務官(海上保安庁長官)) 大久保武雄
即ち集団密航の点について記載しておりますように、朝鮮の治安問題からいたしまして、最近徴兵忌避或いは将来の治安に関する見通しより、日本に密航して参りますのが非常に増加しておる情報を受けておる次第であります。これに基きまして非常警戒をいたしておりますと、僅か2週間程度で200~300人の検挙があるといったような状況に相成っておる次第であります。
この外に相当の集団密航があるようでありますが、遺憾ながら海上保安庁の船舶がまだ十分整備しておりません点と、保安庁船舶の装備が完全でないために、これを海上において逃走せしめておる事例が相当多きに上っておりますことは、甚だ残念であると申さなければならないと思います。
尚又最近の特別の傾向といたしましては、密航密輸の犯人が、むしろ積極的に海上保安庁の船隊に対しまして抵抗するという傾向が多くなって参っております。即ち大砲装備が密輸船等についてございまするので、この船は国警等と打合せまして、かねて手配中の船でございましたが、海上保安庁の警戒網を突破いたしまして、神戸の西灘に砂糖の揚陸をいたしておった次第であります。
この船舶は主砲といたしまして捕鯨砲の40ミリ1門、予備砲といたしまして36ミリ1門、即ち合計2門の大砲を装備いたしておりました。且つ装填用の実弾2発を所有しておることが判明した次第でございます。