[183]
民社党 横手文雄
ただ、繰り返して申し上げるようでございますけれども、過去における日本政府の植民地支配の責任を償い、これまでに与えたさまざまな不利益を救済するために、少なくとも協定永住人については外国人登録証の常時携帯義務、指紋押捺義務等は免除するというような特別立法の措置が必要ではありませんか、こう申し上げているのでございますが、いかがでございますか。
[184]
政府委員(法務省入国管理局長) 小林俊二
先生御指摘の点を検討いたしますには、これらの制度の由来あるいは実態について考慮を払う必要があろうかと存じます。
御承知のように、指紋押捺制度というものは昭和22年に外国人登録制度が導入されました際、あるいは設立されました際には存在しなかったのでございます。この制度が導入されましたのはそれから5年後の昭和27年でございました。実際に実施に移されたのはさらに3年後の昭和30年でございますけれども、なぜこの制度が導入されたかと申しますと、それは昭和22年から昭和27年に至る5年間における外国人登録制度の混乱に起因するものでございます。
すなわちその混乱は、朝鮮戦争といった事態もございまして、一たん朝鮮半島に帰国した人々が大挙して密入国してきたということによって生じたわけでございます。これらの人々によって不正登録あるいは二重登録、三重登録といった登録が実施されまして、そして入手した登録証明書を密入国者が携帯して正規在留者を装ったということによって我が国の外国人登録制度が非常な混乱に陥ったという事実があるのでございます。こうした事実を是正する必要上、27年に外国人登録法が制定されます際に指紋制度が導入されたという経緯がございます。
もちろん情勢はその後鎮静化、安定化してきております。しかしながら、現在なお毎年約500名に上る密入国者が摘発されて処理されておるのでございます。これらの密入国者はいずれも朝鮮半島出身者でございます。したがって、密入国を問題とする際に問題としなくてはならないのは、あくまでも朝鮮半島からの密入国ということに限られるのでございます。もちろん不法残留、これは東南アジアからの入国者によるケースが多うございますけれども、その点も考えなくてはなりません。
しかしながら最も問題となりますのは、できれば正規在留を装うであろう人々、すなわち密入国者の問題でございます。とすれば、これらの人々が引き続き朝鮮半島から日本にやってきておる、今なお潜在している密入国者が大阪地方を中心にして数万に上るという状況の中で、彼らが装うであろう正規在留者は当然のことながら朝鮮半島出身者であります。したがって、朝鮮半島出身者であって、現在我が国に正規に在留している人々が正規在留者であることを証明する手段を設けることは、こうした観点からやむを得ないところであろうかと思います。言いかえれば、朝鮮半島出身者である永住者を、現在問題になっておりますような外国人登録制度の諸要件、端的に言えば、指紋制度の対象から外すとするならば、指紋制度が本来持って生まれたところの目的を達することができなくなるということがこの問題の解決を難しくしているということなのでございます。