昭和37年08月24日 衆議院 法務委員会

[085]
日本社会党(社会民主党) 猪俣浩三
質問の要旨をよく御理解いただくために多少の前文句を申しますが、御存じのように李承晩政権というものがありまして、これが相当長く続いた。ところが、李承晩のやり方に対して相当反対の人たちが韓国にふえて参りまして、1958年に大統領の選挙がありましたときに、この李承晩に対立いたしまして、チョ・ボンアムという人が候補に立ちまして、この人は非常に人気のある人で、公平に選挙をやったならば、この人が大統領に当選する可能性があったわけであります。

この人が進歩党なるものを組織いたしまして、韓国に一大進歩的政権樹立のために運動したわけであります。そうすると、この人は李承晩政権によって逮捕せられ、1959年、大統領の選挙があった翌年には遂に死刑に処せられてしまった。当時この進歩党の結成などに奔走しておった進歩的な分子、おもに学生なんかが多いのですが、日本に相当脱出して参りました。

なお、続いて1960年の大統領選挙には、御存じのように李承晩が驚くべき不正選挙をやりまして、これが遂に彼が崩壊しなければならない運命を作ったものでありますが、この際にも相当の脱出者があったわけであります。

なおまた遠くさかのぼるなれば、朝鮮戦争のときに、やはりいろいろの事情から日本に脱出してきた学生なんかが相当あるわけであります。ある人間などは、日本に留学するについては向こうで試験がある、その日本に来る試験には合格したにかかわらず、アメリカのGHQの許可がなければ日本に来れない。朝鮮戦争で許可などという手続をやっている余裕がない、そこで好学のあまり日本に脱出してきた。

日本では、その事情を認めて滞留許可をして勉学をされておったのでありますが、御存じのように昨年は朴政権なるものができた。これはクーデターによって樹立されたファッショ政権であることは天下公知の事実であります。そこで、これらのいろいろの政変下において日本に脱出してきた人たち、ことに学生等で、この朴政権下に帰りますと、人身の自由その他生命の危険さえ脅かされる者が相当出てきたのでありまして、現にずっと李承晩政権あるいは張勉内閣当時から国家の補助によって日本に留学していた学生が、朴政権に反対運動をやったということで相当人数奨学金の停止処分を受けている。その中にはすでに強制退去の命令を受けている者もあるわけであります。こういう人間ども、ことに大多数は学生でありますが、学生はどこの国でも非常に進歩的な分子が多いわけでありまして、朴政権に反対し、そして南北統一をはかり、民族の独立をはかるということで、日本に来ております学生はその中心勢力になって運動をやっておるわけであります。