昭和31年02月03日 衆議院 外務委員会

[105]
自由民主党 山本利壽
先ほど大村収容所におる者の釈放のことで御答弁がございましたが、この問題は日本の漁民が李承晩ラインにひっかかって、たくさん向うで抑留されておる、それをなかなか帰さない、だから1つのそれの条件として大村におる韓国人を釈放したら漁民を帰そうといったような情報があったようでありますが、先ほどの御答弁によると、釈放したあとですぐ韓国が受け取るならば釈放するけれども、また内地におるならこれは困るから釈放しない、この意味においては、それでは日本の漁民の韓国に抑留されておる者との取引関係という点については交渉は決裂ということになりますか。その関連においての法務大臣のお考えをちょっと承わりたいと思います。

そうして時間を節約しますためにもう1つ伺っておきますが、一体大村収容所におるところの韓国人というものは、あるいは北鮮人もおるかもしれませんが、その犯罪者で単なる密入国者というものは次から次に韓国が受け取っておるのかどうか。それから密入国者でなしに、日本に相当長期間滞在しておって犯罪を犯した者をそこへ収容してある、ただその数がどういう関係にあるか。

それからある人々からいえば日本の漁民が抑留されておるということは、これは非常に不合理のことであるから、これをぜひ帰してもらいたいという意味で、場合によってはその数の関係がありますけれども、犯罪人であっても一応外へ出して、それには一人々々に刑事をしばらくつけて監視させるくらいの手数をとっても、それと引きかえに韓国におる日本の漁民を帰してもらいたいという意向もある一部には相当強いけれども、そういうことはとうてい不可能なことであるかどうか。

一応釈放してそのままそういう韓国人が罪を犯さないならば、日本の国家、社会としては何ら障害はないはずである。もし重ねて犯罪を犯す場合には、これはもう一度つかまえて放り込んだって一向差しつかえないことであるが、そこらの関係がずいぶんデリケートでありますが、法務省においてはここいらの点をどういうふうに考えておられるか、そうしてまた朝鮮人の犯罪人の中には北鮮系の者はいないのか、もしおった場合には北鮮の方では韓国と違って日本から帰りたいという者は相当受け入れる用意があるということをしばしばわれわれは聞いておる。それだから北鮮に向って大村収容所におる者の中で自分は北鮮に帰りたいのだという者がいれば、その方は帰してもよいと思うのですが、そこいらの数の割合とか、あるかないか、北鮮に向って帰す意思があるかどうかというような点を承わりたい。まだ承わりたいことがありますが、あまり一ぺんに言いますと混雑しますから、一応御答弁を伺います。

[106]
法務大臣 牧野良三
お答えをいたします。むずかしい理屈は私は全然言っておりません。必ず李承晩のところで抑留している日本人を帰すためにはどんなことでもいたしたいと思っております。どんな譲歩でもして、私はこっちを釈放して、向うは交換するなら交換する、それはやるつもりです。ただけじめだけはやっておきませんと、帰すでしょう、すぐひっつかまるのです。そして、とっつかまえておいて、またあの交渉を始めるのですね。簡単にひっつかむですね。だからけじめをちゃんとして、そうして外務省とも交渉して、心配のないように、もう九州から山口県の沿岸のお方に不安のないようなことをやりたいと思っております。ただ北鮮の人なんかはきらうのですよ。(山本(利)委員「帰すことをですか」と呼ぶ)

いいえ、李承晩が、隣で敵を増すのでしょう、だからいやなんですよ。そこにあそこらの返事をしない微妙なところがあるのですよ。あのずるい態度はいかぬですよ。そこでずるさは認めて、けじめだけつける。

そこで昨日現在の報告を申しましょう。不法入国者は1212名、そのうち北鮮へ帰国希望者が50名ございます。それから受刑者は391名、北鮮に帰国希望者が20名あります。この発表を知っているのですね。そして日本では国会議員諸君が私に、すべてこういう人たちは希望するところに帰せ、こうおっしゃるのです。それがあるのですよ。だからこれは希望でしょう。そうするとすぐ70名が帰るというので、それをこわがっているのですよ。南鮮の人は、李承晩の方は、こんなことをこわがってはいかぬですよ。

だから私どもの方は、りっぱな態度で、北鮮に行く人は北鮮にやる、そういうことではっきりしたい。だからそういうことは認めて、李承晩も認めるし、そしてよその国も敵国を利するような態度で日本はやるのじゃないのだということさえはっきりしてくれれば、やろうじゃありませんか。