昭和31年03月20日 参議院 予算委員会第四分科会

[018]
自由民主党 吉田萬次
私は朝鮮、韓国の問題について質問したいと思うのですが、終戦当時あの混乱しておるときに、朝鮮人がいわゆる外国人という名前のもとに、非常にあらゆる方面において活動し、しかも善良な活動ならいいけれども、相当国家的に見て損害のあるような活動をしておりました。その習慣が現在まで続いておるように感ぜられるのでありまして、いわゆる密造酒であるとか、あるいは麻薬であるとか、あるいは密入国であるとかいうようなふうのものの大半は、私はこの朝鮮半島の諸君であると思うのであります。

従ってまたその入国者というものも、居留しておる者も、非常に朝鮮人はたくさんおると思う。しかしながら国家的の立場から考えまして、一般外国人と違って非常な国家の経済から考えましても、芳ばしからぬ私は結果を見るのであります。従ってこの外国人としての朝鮮、あるいは外国人というものに対する方策というものは、私は相当深甚なる注意を払って、そうして将来のために考究しなければならぬたくさんな問題があると思うのです。

かような点から考えまして法務省としてどんな方針のもとに、またどんな考えをもってこれに対して一定の方針といいますか方策といいますか、そういうものをもって臨んでおられるか、また続いてこれに付帯して大村収容所におけるところのこの人たちの犯罪の種別というふうなものをお尋ねいたしたい。

[019]
政府委員(法務政務次官) 松原一彦
これは率直に申して非常にむずかしい問題で、今日本の、ことに法務行政のうちの最も悩みきっている問題の一つでございますことは御承知の通りであります。

従来日本人であったのでありますが、それが終戦によって国籍が非常に不明になっておる。帰化しきっている者としない者がいるわけでございまして、まことにむずかしい問題だと思う。それが今日大村収容所の中におる重い罪を犯した数100名の人たち、強制送還をやろうとしても受け取らないという現実であります。一方には密入国者が毎日ふえてきておる。最近には激増というのではありませんけれども、1000数百名が大村に、これは密入国者として当然帰さなければならないし、受け取ってもらわなければならぬ人間が検束せられておるのであります。この解決は何と申しましても朝鮮と日本との間における国交の正常化ができない限りにはどうにもこうにもならない。

一方には日本の漁夫が向うで抑留されている。これまた当然帰さなければならぬ者が理由なくして抑留せられている、こういうことで刑期が満ちておりながら抑留されているというようなわけでございまして、この関係が打開せられることを私は非常に祈ってやまないのでありますが、こまかな数字及び経緯等につきましては入国管理局長がここにおられますから、内田政府委員からお答えさせていただきたいと思います。

[020]
政府委員(法務省入国管理局長) 内田藤雄
現在日本に在留しております外国人の登録に現われました数字は、全体で約64万でございますが、そのうち朝鮮人が57万6750、中国が4万3967ということになっておりますので、大体60余万のほとんど95%くらいが朝鮮人と中国人でございます。われわれの方の仕事は、新しい外国人の出入国の問題、また現にそれで出入りしている外国人の数も少々ございますが、そのほかにただいまおっしゃいましたように戦前から日本に在留しておりまして、終戦までは日本人であったというこの特殊な人々、この問題が実は非常に厄介な問題になっているわけでございます。

それで確かに戦後のあの特殊な状況におきまして、いわゆる第三国人という名のもとに、中国も多少ございましたが、数におきましては確かに朝鮮人が非常にいろいろ暴れもいたしましたし、一時あたかも戦勝国民のような気持で非常に生活状態が急に上ったわけでございます。ところがその後社会情勢が落ちつくにつれまして、いわゆるやみとかそういうことでは生活ができなくなりました結果、しかもその間に正常な勤労精神を失ってしまっておるというようなことから、大量にこの人々が犯罪者の群に移って行ったということは大体申し得るのではないかと存じます。

その結果これは矯正局の方の数字を伺いますと、現在約6万人くらいの刑務所に入っております者のうち、その1割近い人が朝鮮人であるように聞いております。そういたしますと、人口との関係を考えますと、約8000万でその数字5万なにがしであるにもかかわらず、片一方では60万そこそこで4000幾らということでございますから、犯罪の比率から申しますと10倍を越しておるくらいの比率になっておるわけでございます。で犯罪の内容は先ほどおっしゃいましたように、われわれの方に現われて参ります限りでも、ヒロポンとかああいう関係の犯罪、それから密造そういった専売法規と申しますかああいうふうの関係の違反者、そのほかにはやはり量から申しますと何といっても窃盗が非常に多いのでございます。

そうしてそういう人々の中からわれわれといたしましては入管令に基きまして懲役1年以上の刑を受けました者は当然退去を強制できるということになっております。これは日本の出入国管理令がそうであるばかりでなく、国際慣習といたしましても、外国に在留しておる外国人が犯罪をいたしたような場合には、ある限度を越えた者を退去にいたすということは、これはもう国際的にも認められておるところでございますので、われわれとしてもその入管令を基礎とし、またこの国際慣習に基きまして悪質の外国人は退去にいたしておるわけでございます。

しかし先ほども申し上げましたように、戦前から日本に長く住んでおりまして、生活の本拠が日本にあるような者を、ただ外国から渡航して一時日本におる外国人と全然同等に扱うということは、また必ずしも正当と申せませんので、われわれといたしましては戦前からおりますような朝鮮人の場合には、ただ1回犯罪を犯して懲役1年以上の刑を受けたというようなことだけでは退去にいたしておりません。大体の現状を申し上げますならば、前科、もっともその内容にもよりますが、たとえば窃盗等の普通の犯罪の場合でございますと、前科3犯以上くらいでないと退去にいたしておりません。われわれが記録を見まして大体その者の生活が犯罪に依存しておる、犯罪の上に生活しておるのではないかと考えられるような者のみを退去にいたしておるのでございますが、それが毎月刑務所の方から出所いたしまして、われわれの方に送られて参ります200ないし250、月によりましては300くらいのときもございますが、そういう者の中から、大体1割5分見当くらいの、これは結果においてそうなるのでございまして、1割5分というように限っておるのではございませんが、大体において1割5分ないし2割程度の者を退去強制にいたしまして、大村に送っておるわけでございます。

それが、ところが先ほど政務次官のお話にもございましたように、現在の日韓関係が正常でないというばかりでなく、韓国側の全く政略的な意図と申しますか、日本において戦前からおる朝鮮人については日本に在留資格があるのであって日本側にはこれを退去強制いたすような権利がないのだと言わぬばかりの態度でこれらの悪質なる朝鮮人の国内釈放を要求しておるというのが現状でございます。

そうしてそれに引っかけまして、御承知のごとく李ラインを越えたという理由でつかまえました日本人の漁夫を人質にいたしまして、その日本への送還を拒否しつつこれらの悪質なる朝鮮人を国内で釈放しろと、こういうことを要求しておるというのが現在の状況でございます。

そのために、理論上密入国を引き取らぬということは一回も申しておりませんが、実際上密入国者の引き取りも拒否いたしております。

密入国者の数の方は、これは新しい密入国者というのは、大体戦後の趨勢を申し上げますと減って参っております。と申しますのは、なぜ密入国をして参るかといいますと、その一番大きな原因は、戦争で疎開などさせられまして、家族の一部の者が朝鮮と日本に分れてしまった、それをまたもとの家族の者の所へ復帰したいというようなのがまあ一番多い例なのでございます。それで戦後10年もたちましたので、そういった種類の密入国というものが漸次まあ片がついたと申しますか、それが大きな理由だと思いますが、漸次減って参っております。ことに朝鮮動乱の直後におきまして、向うで家を焼かれたとか、食うに困ったという者が大量に密入国して参りました昭和26~27年ころに比べますと、最近はよほど減って参っております。そういう傾向にはございますが、しかしなおかつ現在すでにもぐって、潜在している密入国者の数というものは、これは相当大きいものと考えております。従いまして新しい密入国は、現場でつかまえます者以外に、今までもぐっておりました密入国者が何らかの事情によりまして密入国者として発見されまして、それでわれわれが退去強制にする者が、これがまた相当ございます。

そういった関係で、大村が一番多い状況のときには、昨年末約1350くらいですか、それから先ほど申しました犯罪等の理由によりまして退去強制いたしました者が約350、両方合せまして約1700という状況になったときがございます。そのほかに浜松に分室を設けておりまして、これは横浜収容所の分室でございますが、ここに中国関係が現在約150くらいおると思いますが、それから大村が一ぱいでありますために、現在浜松に送っております朝鮮人がそのほか現在すでに100くらいに達しておるかと思います。そのほかほんとうに収容施設が十分でありましたならば、当然収容しなければならぬ者の数は数100あると考えます。

で、この問題は目下外務省とも協力いたしましてせっかく日韓の間に交渉をいたしておるわけでございますが、われわれといたしましては先ほど申しましたような人質外交にひっかかって、悪質不良な外国人を日本から退去いたさす権限をこういうところで傷つけると申しますか、その将来に暗影を投ずるようなことは断じていたしたくない、そのためにはあくまで大村の収容施設が一ぱいになったり、いろいろなことで苦労はいたしておりますが、がんばっていきたい、こう考えておる次第であります。